TRINITY 会長 藤田正志
2020年に東京都千代田区に新しいボクシングジムが誕生しました。その名もボクシングスタジオ「TRINITY」です。
会長の藤田正志さんは、ボクシングの指導者になる前はサラリーマンをやっていたという異色の経歴の持ち主。
そんな藤田さんに今回はお話を伺い、ボクシングジムを開くまでの経緯や「TRINITY」の魅力についてお聞きしました。
高校生の時にボクシングと出会い、社会人になって再会
-藤田さんのボクシング歴を教えてください。
高校時代に地元のボクシングジムで2年間ほどボクシングをやっていました。25歳の時に社会人になったのですが、生活も不規則になって太り始めてしまって、このままではまずいと思っていたのです。
それで学生の時にボクシングをやっていたこともあって、職場の近くにあるボクシングジムに通い始めました。
-ボクシングに興味を持ったきっかけを教えてください。
高校時代は地元のジムに通っていて、当時は結構ボクシングが熱くて、世界戦がゴールデンの時間帯でやっていた時代でした。
今では信じられないかもしれませんが、世界戦は必ず7時から放送されていました。当時は辰吉丈一郎さんが活躍していて、竹原慎二さんや畑山隆則さんが現役だった時です。
思春期の多感な時期だったのでボクサーはカッコいいなと思ってましたし、当時は自然と興味が湧きました。
-ボクシングジムに通っていた時はサラリーマンだったとお聞きしていますが。
25歳の時にボクシングを再開して、32歳か33歳の時に転職するタイミングがありました。
当時通っていたジムが渋谷と新宿に店舗があったのですが、池袋に新しく店舗を作るということで、スタッフの募集をしていた時に声をかけられたのです。それから、そのジムで7年半くらいトレーナーをしていました。
色々経験してきてやりたいことが出てきた
-ご自分でボクシングジムを開こうと思ったきっかけを教えてください。
色々とトレーナーとして経験をしてしまうと、自分がやりたいことが色々と出てきたんです。
そして2019年12月に勤めていたジムを辞め、その約1年後の2020年11月にここをオープンしました。
-独立して良かったことはなんですか?-
楽しさ半分、難しさ半分という感じです。
独立して良かったことは、やりたいと思ったことがすぐできてしまうことです。やってみなければ分からないことが多いので、やってみた結果、色々な発見があります。
正解は1つではない
-社会人からジムを開くというのは並大抵のことではないと思いますが、それはボクシングに魅力があったからですよね。
ボクシングは正解が一つではありません。パンチの打ち方一つでも考え方はそれぞれ違うし、それぞれ正解があります。
指導する側としても自分がこれが良いと思っていても、もう一人の人は同じことを教えても、それぞれ指導方法が違います。
ボクシングの試合一つでも、新しい技術が日々更新されていくものです。日々ボクシングという競技そのものが更新されていくことが、面白いところかなと思います。
-藤田さんはプレーヤーとしての経歴もお持ちなのでしょうか?
プロではありませんが、スパーリング大会とか色々なジムさんが集まって行う試合に2、3回出たことがあります。
プロとは違い、相手の研究などはしないのですが、試合に向けてのトレーニングはしっかりと行いました。
-スパーリング大会にも体重制限あるのですか?
プロの試合ではないので階級もありませんが、この体重にしてくださいというのはありましたね。
そのため、軽くですけどウェイトを絞ったこともあります。
-20代でボクシング始めてから17kg減量したと聞きましたが。
最初はダイエットしようと思ってボクシングジムに通ったのですが、1年半くらいで17kg落としました。
最初の1年くらいは技術とかを無視して、とりあえず痩せれればいいやという感じだったのですが、やっていくうちに楽しくなってきたんです。
力任せに打つのではなくて、ボクシングの動きは技術に裏打ちされたものなので、間違った動作よりも正しい動作で動けたほうが、効率よく減量できるようになります。最終的にがっつり痩せられたのも、正しく動けるようになってからです。
相手のニーズに答える指導がモットー
-指導する上で大切にしていることはなんですか?
パーソナルトレーニングで、一人一人のニーズに、いかにお答えられるかです。そのために少人数制にしました。
ダイエット一つとっても、具体的にどこを痩せたいというのもそれぞれ違いますし、まずその方の目的にどれだけ近づけるかどうかででしょう。具体的な体の動かし方1つとっても違いますし、運動が得意な方、運動が苦手な方などの違いもあるので、いかに寄り添って教えられるかということに尽きます。
-ちゃんと相手に寄り添うということは、前のジムでは難しかったのでしょうか?
できなくはなかったのですが、どうしても前のジムのキャパシティーでやると、全員にじっくりと寄り添うのはなかなか難しいものがありました。
不器用でも1つの強み
-印象的な生徒さんのエピソードを教えてください
前の職場の話になりますが、生徒さんに女性の方が一人いました。正直に言うと、最初はあまり上手くなくて、これは教えるのは難しいなと思うような方でした。ボクシングにはさほど興味はなく、ダイエットを目的としてお越しいただいているのだろうなと勝手ながら思っていました。
しかり、その人がある日突然、とても上手くなっておられました。本当に突然です。私の見ていないところでも、ジムに足繫く通い、黙々とトレーニングを積まれてきたそうです。
あまり器用ではなくても、何か一つ強みがあると人は成長できるんだなと思いました。
その時にご本人とお話をしたのですが、ボクシングをやっていくうちに興味を持っていかれたそうです。その方には、僕自身も色々勉強させてもらいましたね。
生徒のやる気を引き出すための工夫
-ボクシングってやっていくうちにハマる人が多いですよね
ハマる方の傾向としては初日の印象が違う、ボクシングとはイメージしていたのと、実際にやってみるのとでは全然違うという意見をよく聞きます。
ボクシングは手しか使わないから、上半身だけ使えればいいと考えている人が多いんです。ですが実際にやってみると、足だったりステップだったり、パンチの打ち方だったりと下半身も使うことに気づきます。
それでも、結局ボクシングをやるのは本人の意思ですから、どれだけ言ってもやるのは自分自身なのです。そのやる気をいかに促すかということが、僕らの仕事なのかなと思います。
今の若い人たちに対して
今の若い人への指導は、色々と考えなければいけないことが多いです。
昔に比べて納得させるのが難しいなと感じていますし、今の時代は少し分からないことがあれば、すぐに調べられます。そのため、下手な知識で接してしまうと、調べたらこうでしたよと言われる時があります。
-確かに目的がはっきりしてないと、疑問を持ってしまう人は多いように感じますね
そういった方が多い印象です。そうなっている背景というのは、頭が良い人が多いのかなと思います。何かあれば、知識として調べられるから、体験よりも知識が上回っているのでしょう。
メッセージ的な話になりますが、まずはやってみてほしいです。そして実際にやってみてダメだったら仕方ない。
別に失敗してもいいと思います。僕も20代、30代の時は失敗しかしてないような気がしますし、失敗してへこんでしまうと、知識のほうが上回っているから悪いほうに考えてしまう。だから失敗しても、行動を続けたらいいと思います。
「成長する自分を作る」
-ジムを通してどういう自分が作れますか?
「成長する自分を作る」です。
結局、答えが一つではないという考え方は、ボクシングに限らずどんなことでも一緒だと思います。僕もそうでしたし、ここのジムは「仕事をしながら合間に来てもらう」というコンセプトであり、ターゲット層がそこなのです。
もちろん、汗を流してダイエットという目的で来る方が多いと思いますが、私自身がそうだったように、トレーニングをしていくと細かい発見があります。それが日常のどこかで役に立ったり、その方自身のパーソナルの部分の成長になると思います。